メートル条約2

国際的な単位の統一は、国家間の公正な取引には不可欠

1875年の会議

1875年の会議での主要議題は、フランス政府が保持しているメートルとキログラムの原器を置き換えることと、世界中で標準の管理を行うための組織を設立することだった。会議では、メートルとキログラム以外の単位については議論されなかった。普仏戦争の終結直後だったため、会議はフランスとドイツの政争の場になった。フランスはメートル法を支配するという立場を失ったが、それがドイツに移ったというわけではなく、国際的な支配に変わった。管理組織の本部がパリに置かれることとなった。

会議は、既存のフランスの標準に基づく新しい国際標準を議論するために招集された。既存のフランスの標準は1799年に作成された原器に基づくが、すでに70年も使われており、消耗によって制定当時から長さ・重さが変化している可能性があった。

1870年の会議の前に、メートル原器が本来の定義による長さより0.03パーセント(300µm)短かったため、既存のメートル原器が国際社会に拒絶されることをフランスの政治家は恐れ、新しい子午線弧の測定を命じた。ドイツ生まれのスイスの代表が「現代の科学者で、地球の大きさから導き出される1メートルを想定している者はいない」と発言したため、フランスの政治家は安心した。1875年に会議が再召集されたとき、できるだけ厳密に既存の原器の値を再現するために、新しい原器を作成することが提案された。

新しいメートル原器は古いメートル原器と同じ長さであるが、測定時の屈曲を減らすために、それまでの長方形の断面から、アンリ・トレスカの考案によるX字型の断面に変更された。また、原器の全体の長さは1メートルより少しだけ長く、両端付近に刻まれた線の間隔が1メートルと定義された。ロンドンの会社ジョンソン・マッセイは、30個のメートル原器と40個のキログラム原器を製造した。1889年の第1回CGPMで、No.6のメートル原器とNo.Xのキログラム原器が国際原器に選ばれた。残りはBIPMでの作業用として保存されるか、各加盟国にその国の原器とするために配布された。国際メートル原器は、1960年にメートルの定義がクリプトン86の発光スペクトルが示す波長に基づいて変更されるまで国際標準として使用された。国際キログラム原器は2019年に施行されたSI基本単位の再定義により廃止された。

計測学は、1875年以降に非常に発達したため、メートル条約は1921年に改正された。これは、学問の垣根を越えて測定標準の調和化を確実にするために、ほかの多くの国際組織がCIPMを交えた討論の場を設けた結果である。さらに、当初は貿易のための標準として考えられたメートル条約が、医療・科学・工学・技術を含む人間の活動の多くの面をカバーするように拡張された。

1921年の条約の拡張と国際単位系

メートル条約は、当初、長さと重さの標準を提供する目的で立案された。ほかの量に関する標準は、別の組織の管理下にあった。時間の単位は天文学者により維持され、電磁気の単位は一連の特別国際会議により定義された。その他の物理の標準と概念は国際純粋・応用物理学連合(IUPAP)や国際応用化学会議のような国際的な団体により維持または定義された。

1901年、ジョヴァンニ・ジョルジは、4つの基本単位に基づく一貫した単位系を作るための提案を発表した。4つの基本単位とは、メートル、キログラム、秒と1つの電気単位(アンペア、ボルト、オームのいずれか)である。1921年、メートル条約は、あらゆる物理量に関する標準化を奨励することを許容するように拡張された。これにより、CIPMの任務の範囲が大きく増えることになり、また、ジョルジの提案を利用する自由を暗黙のうちに与えていた。

第8回CGPM(1933年)では、電気単位のための基準に合意するためにほかの国際組織とともに作業することを決定した。1935年にブリュッセルで開かれた国際電気標準会議(IEC)の総会で、第4の基本単位の選択についてCIPMの適切な諮問委員会と合意をとることが決議された。

第二次世界大戦を挟んで、前回の総会の15年後の1948年に第9回CGPMが開催された。国際純粋・応用物理学連合およびフランス政府からの実用的な計量単位系を確立せよという正式な要請に応じて、メートル条約のすべての加盟国で採択されるような、ただ1つの実用的な計量単位系の勧告を準備するよう、CGPMはCIPMに要求した。同時に、CGPMは計量単位の記号と量の書き表し方と印刷方法についての勧告を正式に採択した。勧告では、もっとも重要なMKS単位系およびCGS単位系の単位についての推奨される記号の一覧を掲載した。また、CGPMは初めて誘導単位に関する勧告を行った。

CIPMの原案は、1954年の第10回CGPMに提出された。それはMKS単位系に基づいてメートル法の単位の定義・記号・用語を広範囲に改訂し、簡略化したものであった。CIPMの勧告では、アンペアを基本単位とし、それ以外の電磁気の単位はそこから導出された。CISとIUPAPとの交渉により、ケルビン度とカンデラが基本単位として提案された。この単位系およびその名前「国際単位系(Système International d’Unités)」は、第11回CGPMで採択された。それから数年の間で、基本単位の定義と、それらの定義を実現するための現示の方法(mise en pratique)は洗練されていった。

CGPMとCIPMを通過した合同決議による国際単位系(SI)の正式な定義は、BIPMにより定期的にインターネットとパンフレット(SI brochure)によって刊行されている。SI文書の第8版Le Système International d’Unités – The International System of Unitsは2006年に刊行された。

コメント

タイトルとURLをコピーしました