事故原因の分析には予想外に時間がかかったが、製造記録の詳細な追跡により、タンクの爆発はいくつもの要因が重なったことによって発生したことが明らかにされた。
そもそも液体酸素や液体水素のような極低温物質を貯蔵するには、気化によって発生する過大な圧力を避けるための排気系統や、熱的絶縁方法を確立することが重要になってくる。機械船のタンクの性能は極めて高く、極低温の液体酸素や液体水素を何年にもわたって保存することができるのだが、タンク内に内容物がある状態のときには、内部を見ることは構造上不可能であった。
事故に関係した部品および要因は、以下のとおりである。
- 部品
- 残量計
- 残量を正確に計測するための、攪拌用ファン
- 液体酸素を必要分だけ蒸発させるための加熱器(ヒーター)
- 加熱器を制御するための温度維持装置(サーモスタット)
- 温度計
- 充填および排出用のバルブとパイプ
- 要因
- 元々機械船の酸素タンクのヒーターとサーモスタットの規格は、司令船の28ボルトに合わせて設計されていた。ところが発射台上でタンクの充填と加圧の作業を行なう際には、65ボルトの電源が使用されていた。このため機械船の製作元のノース・アメリカン社は下請け企業のビーチクラフト社に対し、ヒーターを65ボルトの規格に合わせるよう指示し、ビーチクラフトはそれに従ってタンクを改造したのだが、この時(原因は不明だが)サーモスタットだけには何も変更が加えられなかった。
- また酸素タンクの温度計の表示の上限は100°F(38℃)で、これ以上は表示されないようになっていた。しかし通常は、27℃にまで達すればサーモスタットが作動して自動的にヒーターが停止されるため、特に問題になるものではなかった。
- 今回13号に使用された酸素タンクおよびその付属機器一式を搭載した棚は、本来は先のアポロ10号で使用されるはずのものだったが、電磁波干渉(ノイズ)の問題が発生したために、付属機器ごと取り外され修理されることになった。ところがクレーンでつり上げる際、棚を機体に取りつけている4本のボルトのうちの1本が外されていなかった。このため、2インチ(5センチメートル)ほど持ち上げたところでワイヤーが外れ、棚は元あった場所に落ちてしまった。このときの衝撃により、タンク内の酸素を抜き取る時に使用されるパイプが、本来の取りつけ位置から外れてしまったのである。
- この事故の後、地上での訓練をする際、タンクに液体酸素が充填された。ところが訓練終了後、先の事故で放出用のパイプが外れてしまったために、中の酸素が抜き取れなくなってしまった。今からタンク一式を取り替えるとなると、計画は大幅に遅れてしまう。そのため担当技術者は、ヒーターで液体酸素を加熱し、気化させて放出することを提案し、ラヴェル船長もこれを承認した。ヒーターのスイッチが入れられ、タンク内の温度が上昇し27℃に達した瞬間、サーモスタットが作動するはずであった。ところが回路に接続された65ボルト電源にて発生した電流が、28ボルト用に設計されていたサーモスタットを既に溶着させており、この結果ヒーターの温度制御機構は故障し機能しなくなっていた。
- 8時間後、液体酸素はすべて気化して抜き取られたが、温度制御機構の故障によってヒーターは8時間常時通電していた。そのため最終的にタンク内の温度は538℃にも達したのだが、38℃までしか表示しない温度計であったため異常に気づく者は誰もいなかった。
- これにより攪拌用ファンの電線を覆うテフロン製の被膜がほぼ焼失し、電線がむき出しになった。
- タンク内に液体酸素が再充填された時、それはもはや爆弾のような状態になっていた。飛行士が低温攪拌の操作をするためにファンのスイッチを入れたとき、むき出しになっていた電線から火花が飛び、燃え残っていたテフロンが発火した。100%純粋な液体酸素の中で発生した炎は、300ポンド(136kg)の液体酸素を一瞬のうちに気化させ、膨張した気体酸素がタンクを吹き飛ばした。
- この爆発により正常な第1タンクも損傷を負い、使い物にならなくなった。この事故を教訓として、後の飛行では2つのタンクの距離を十分に離し、さらに非常用の電源を別の区画に設置する改良が加えられた。
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